R_etc

□R×etc
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僕等、たたかう生き物です。


冬の午後。
陽射しは暖かいが、風はつめたい。

学校が冬季休暇に入ったせいもあって、普段より賑わうカードキャピタルの店内が、その時、瞬間、静まり返った。

扉が開いて、客が一人、入って来る。
北風が一陣、吹き込んで。

寒っ、と。
声をあげて、誘われるように、入口に視線を送る。
誰が最初だったかは、わからない。

ただ、そこで、皆、一様に固まった。

「新田新右衛門さんはおられますか、」

声は静かで。
口調は穏やかで。
表情はにこやかだ。

けれど。

漆黒のコートに、深紅の長い髪、白皙の美貌。
随分と人目を引く容姿の青年を。
その、不穏さを。

この店内に居る者は、誰一人として、見誤らない。
ヴァンガードファイターの頂点。

「雀ヶ森レン、」

沈黙の中。
カウンターで呟くミサキの声が、ショップ全体の感情を読み取るみたいに、ひくく響いた。

「はいはい、僕にお客さんですか、」

状況はともかく、自分の名が聞こえたのだろう。
カウンターの奥から、シンが顔を出した。

その姿を認めると、ふわふわとしていたレンの表情が、急速な翳りを帯びた。
陽光が雪雲に掻き消されるように、紅の眸に陰が宿る。

けれど瞬間、凶暴な気配は潜伏して。

「お誕生日おめでとうございます、シンさん」

レンは、人懐こい顔で、笑った。
す、と手を上げると、店の外に控えていた配下らしき者が、ひと抱えもある花束を運んで来る。
受け取ると、カウンター越しに、シンに向けて差し出した。

えっ店長、今日誕生日なのか、おめでとー!

カムイが言って。
三和が言って。
店内は唱和状態になる。

シンは、ええ、みんなそんなに祝ってくれるんですねありがとう、と、あからさまに照れながらあちこちに視線を飛ばして。
正面のレンに、戻した。

「ありがとう。……けれど、きみに祝って貰うようなご縁がありましたか?」

「貴方とたたかいに来ました。対戦相手に礼を尽くしたまでです」

レンは、カウンターの上にデッキを置いて。

笑顔が、変わった。

既に、ぎらりと不穏なうつくしさを纏っている。

あかい目に宿るのは。
抜き身の刃のような。
敵を、射抜く視線だ。

「え。そう言われましても、僕はファイトはやらないんですよ。……そうだミサキ、どうだい代わりにレンくんと対戦、」

「貴方でなければ駄目です」

まっすぐにレンが口にするのは、まるで愛を告げるような。

「僕は調べたんです。過去の貴方の対戦記録は連戦連勝で、十二年前から九年前まで、四年連続で世界大会優勝」

レンの言葉に、店中がざわりと揺れた。

「えっ、いや、……そんな、まさか」

紅の視線に射抜かれた本人は、落ち着かぬげに、眼鏡の下で目をぱちくりさせている。

「それは本当なのか、戸倉、」

俄然喰いついて身を乗り出したのは、櫂だった。

「……聞いたことないけど……、」

けれど可能性はある。
カードに対する知識は本物だし、ファイトに生かすことが出来るなら、確かに力となるだろう。

「たたかってみればわかります、まさか逃げませんよね」

レンが身を乗り出す。
FFの権力で小さいお店のひとつや二つ、簡単に潰せるんですけど、と、既にその発言は脅迫だった。

「えぇ、困りましたね、しかし。……うーん、一回だけですよ?一回たたかえば、誤解だとわかりますよね、」

「ほぅ。惚けますか。……よろしい、では一度」

対戦用の卓に、移動した。
レンは普段通りに、無駄に格好をつけるかたちで、颯爽と。
シンは困った風を隠しもせずに、ふらふらと。

「……レンさん、やる気満々だね、」

アイチが櫂に言うと。

「困ったものだな」

櫂は櫂で、溜息をつく。
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